本書は、日本家政学会被服構成学部会として取り組んだ事業の一つとして発行されている。大学・短大では、被服製作実習に対する学生の技術力の低下が著しく、この現状のもとで、中学生・高校生に被服製作や布を使ったものづくりの楽しさを伝えたいという願いから、20名の被服構成学部会員が被服構成学の専門知識を組み込みながら執筆している。
本書は、中学校・高等学校の製作実習の授業で活用できることを目的として、「基礎編」「実習編」「資料編」から成り、基礎的技能の習得を目的とした簡単な作品づくりから衣服製作まで、幅広い作品例を取り上げ、さらに指導案、製作学習の評価も紹介している。写真・図が豊富で見やすく、説明文は簡潔でわかりやすいため、授業の配布資料として活用できることが本書の特徴の一つといえる。また「実習編」は、「生活を豊かにする」「リメイク」「エコロジー」「伝統文化」「衣服」「布の表情」の6項目から成り、食生活・住生活や伝統文化など他領域と関わらせた作品が紹介されている。例えば、「手ぬぐいでつくる乳児の肌着(製作時間5時間)」では、製作を通して乳児の体型,肌の柔らかさも理解することができ、「立体的な表情をつくるピンワーク」では、布の表情の豊かさを知ることでファッションへの憧れを抱く生徒も少なくないのではないだろうか。
次代を担う中学生・高校生が本書により、豊かな生活,快適な衣生活について楽しみながら取り組む姿が期待される。なお本書は一般書店では取り扱っておらず、開隆堂出版ホームページからの購入申し込みが必要である。
植竹 桃子 |